自筆証書遺言のメリットは、自分で書いて作成するため費用がかからず手軽に出来るということや、公正証書遺言の場合と異なり、遺言の中身が他人に知られずに済むことなどです。
一方、紛失、偽造、変造や、隠匿・破棄の危険があります。自筆証書遺言は遺言者が自分一人で作成するため、本人の意思で作成したことを立証することが困難であり、信ぴょう性が公正証書遺言に比べ、かなり低いといえます。そのため、民法の規定に従い、相続開始後に家庭裁判所に「検認」の申し立てをしなければならず、遺言執行に時間がかかります(概ね1か月程度)。
まずは安全・確実な「公正証書遺言」の作成をお勧めしたいのですが、費用面、時間的制約のため、自筆証書遺言を作成する方もいらっしゃいます。自筆証書遺言書は、遺言者本人が保管するか、信頼のおける人(遺言によって財産を多く取得する人や、遺言書で遺言執行者に指定した人)に委ねる以外にも、近年では遺言保管所(法務局)で保管する制度が出来ました。以下、保管制度について、具体的な手続きをお知らせいたします。
【保管制度利用のための遺言書の作成】
◉民法968条(自筆証書遺言)の要件を満たす必要があります。
①遺言書の全文、遺言の作成日付及び遺言者氏名を、必ず遺言者が自書し、押印します。
遺言の作成日付は、日付が特定できるよう正確に記載します。
例)「令和3年3月吉日」は不可(具体的な日付が特定できないため)。
②財産目録は、自書でなく、パソコンを利用したり、不動産(土地・建物)の登記事項証明書や通帳のコピー等の資 料を添付する方法で作成することができますが、その場合は、その目録の全てのページに署名押印が必要です。
③書き間違った場合の訂正や、内容を書き足したいときの追加は、その場所が分かるように示した上で、訂正又は追加した旨を付記して署名し、訂正又は追加した箇所に押印します。
◉本制度利用に当たっては、以下のルールに従わなければなりません。
①用紙について
サイズ:A4サイズ
模様等:記載した文字が読みづらくなるような模様や彩色がないもの。一般的な罫線は問題ない。
余白:必ず、最低限、上部5mm、下部10mm、左20mm、右5mmの余白をそれぞれ確保。
②片面のみに記載
用紙の両面に記載して作成された遺言書は不可。財産目録も同様。
③各ページにページ番号を記載。ページ番号も余白内記載。
例)1/2,2/2(総ページ数も分かるように記載)
④複数ページある場合でも、ホチキス等で綴じない。
スキャナで遺言書を読み取るため、全てのページをバラバラのまま提出(封筒も不要)。
⑤その他
遺言書は長期間保存するので、消えるインク等は使用せず、ボールペンや万年筆などの消えにくい筆記具を使用。また、遺言者の氏名は、ペンネーム等ではなく、戸籍どおりの氏名(外国籍の方は公的書類記載のとおり)を記載。※民法上は、本人を特定できればペンネームでも問題ないとされていますが、本制度では、遺言書の保管の申請時に提出する添付資料等で、申請人である遺言者本人の氏名を確認した上で保管されるため、ペンネーム等の公的資料で確認することできない表記である場合は預かってもらえない。
【保管制度利用のための遺言書の作成】
申請書/届出書/請求書の作成が必要です。
【保管申請の予約・申請】
①遺言者の住所地、②遺言者の本籍地、③遺言者が所有する不動産の所在地 のいずれかを管轄する法務局へ申請します。予約は、法務局手続案内予約サービスの専用HP、もしくは電話(平日8:30~17:15まで(土日祝日,年末年始を除く。))で行います。
申請当日、法務局へは遺言者本人が出向く必要があります。(付添人が介助等のために同伴することは出来ますが、代理人を立てて本人が出向かないということは出来ません。)
遺言書、申請書等には、本籍の記載のある住民票の写し(遺言書作成後3ヵ月以内のもの)の添付、マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート等の本人確認書類のいずれか1点が必要です。
手数料は、1件につき3,900円です。事前に収入印紙を購入し、手数料納付書に貼ります。
【ご家族へのお伝え】
当制度により保管を受け付けられても、法務局は、遺言者が死亡しても当然には遺言書の存在を知らせてはくれません。よって、遺言書の作成と保管申請をしていることを、予めご家族に伝えておく必要があります。その際、法務局から受領した「遺言書保管証」の写しを渡しておくと間違いありません。
【遺言者死亡後の「遺言書情報証明書」の交付申請】
遺言者が亡くなられたら、法務局に「遺言書情報証明書」の交付を申請します。申請は誰でも出来ます。この「証明書」は、登記や金融機関の手続きにも利用できます。
