【遺産分割協議の場合の登記の要否】
父が亡くなり、長男と次男が土地を相続することになりました。長男と次男で遺産分割協議を行い、長男が単独で相続することになりました。にもかかわらず、長男が所有権移転登記を済ませる前に、次男はその土地を欲しいと言ってきた友人に対し、長男の許可なく勝手に売却してしまいました。そんなことを知らない友人は土地の所有権移転登記を済ませてしまいました。長男としてみればひどい話ですが、次男の友人は土地を登記し、お店を出す準備をすでに始めており、今更土地を返してくれと言われても無理です。

判例は、遺産分割により相続分(当事例によれば法定相続分である2分の1)を超える権利を取得したことを第三者に対抗するためには、登記が必要であるとしています(最判昭46.1.26)。事例のケースでは、長男は登記をしておらず、第三者である次男の友人に対して「遺産分割協議の結果、自分の土地だから、土地を返して」と主張することは出来ないということになります。
これは、民法899条の2(共同相続における権利の承継の対抗要件)に基づくもので、法定相続分による権利の承継があると信頼していた第三者(遺言や遺産分割協議の有無や内容を知る手段を有していない)の不測の損害を防止し取引の安全を守るために、2018年7月に法改正されたことによるものです。
【遺言の場合はどうか】
遺言による財産処分がされた場合としては以下の3つのパターンが考えられますが、いずれの場合も、相続分を超える権利について第三者に対抗するためには「登記」が必要ということになります。
①遺贈(財産の無償譲与)の場合(民964条)
②相続分の指定の場合(民902条)
③遺産分割の方法の指定の場合(民908条)
実は、2018年7月の法改正前は、②③については、相続を原因とする包括承継であるため、対抗要件(登記)を具備しなくても第三者に権利を主張できるとされていましたが、改正後は一律に「登記」が必要になりました。
これは「特定財産承継遺言」(遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言)(民1014②)の場合も同様です。具体的には、「土地を長男に相続させる」という遺言がある場合に、仮に次男が遺言の存在と内容を知りながら、法定相続分による相続登記を済ませ、第三者に自らの持ち分を売却した場合、長男は当該土地の所有権を第三者に主張することは出来ないということになります。
【対応策】
よって「特定財産承継遺言」の可能性がある場合は、死亡情報を一日も早く知り、いち早く遺言に基づく相続登記をしてしまうことが要求されます。相続人同士の関係が良好であればよいのですが、上記の事例のような「早い者勝ち」のようなことが生じてしまうと、第三者との対抗の問題ではなく、身内の間の争いになってしまいます。未然防止のためにも、「遺産分割協議であっても、遺言による承継であっても、登記をしなければ、第三者に対抗出来ない」ということを知っておくことが、争いの予防に繋がります。
