「自分の考えがしっかりしているうちに財産を承継・整理してしまいたい。でも全部譲ってしまうのも不安だ。」といった場合、財産の管理権だけを、信頼できる家族に託すという選択が家族信託です。家族信託には以下のようなメリットがあります。自由度が高く、成年後見や遺言では出来ないことを補うことが出来ます。便利ではありますが、将来を見据えて設計しないと、認知症発症後や本人が亡くなった後に思わぬトラブルになるリスクもあるため、十分検討して契約する必要があります。
家族信託は契約行為であるため、委託者となる本人が認知症になる前に信託契約をしておかなければなりません。
家族信託契約時に贈与税がかからない
判断能力があるうちに、財産を生前贈与する方法もありますが、贈与してしまうと、その方の財産ではなくなることに加え、贈与税が高額になることが多いです。家族信託の場合、委託者は財産の実質的所有者でありながら、自身のために信託財産の利益(家賃収入など)を受けることも出来ます。さらに、単なる信託契約であるため、贈与や相続が行われた訳ではないので、贈与税や取得税はかかりません。
また、処分時の譲渡所得税は委託者が担うため、居住用財産の3,000万円特別控除の特例を使い、節税が出来ます。また、委託者が亡くなって相続が発生した際も、小規模宅地等の相続税の特例(相続税評価額が80%減額)による節税も可能です。
ランニングコストがかからない
後見人を付けると、家庭裁判所の監督を受けながら資産の保全が出来ますが、亡くなるまで後見人や後見監督人に対する報酬が毎月数万円掛かります。この点からも家族信託を検討する方が増えています。
柔軟かつ積極的な資産活用ができる
成年後見制度においては、不動産を売却する場合、成年後見人は裁判所の許可が得られにくいのが実態です。これは、成年後見制度が本人の財産維持を目的としているためです。
一方、家族信託の場合は、受託者である家族の裁量で不動産の売買を柔軟に行うことが出来るメリットがあります。本人の認知症発症後でも、信託受託者が投資や不動産処分、相続税対策などを行うことが出来ます。(不動産なら相続税は路線価評価となるため、現金で持つよりも相続税評価額が抑えられる。また、投資信託などで資産運用も可能。)
2次相続対策ができる
遺言の場合、相続人が指定する者への直接的な相続しか記載できず、その相続人が亡くなった後の財産の引継ぎ先は指定できません。遺言の場合は二次相続以降を決めることが出来ないのです。また、エンディングノートの場合は、法的に通用しない可能性があります。
一方、家族信託では、受託者が信託不動産を管理するために、信託の登記を行いますが、その際に「信託目録」(信託財産に関する情報)も登記されます。この目録には「信託事項」という欄があり、「信託財産の管理方法」という項目内に受益者を連続的に記載することが可能です。具体的には、第1受益者を当該不動産の委託者である父、第2受益者を長男(父が亡くなった場合)、第3受益者を長男の妻(長男が亡くなった場合)、残余財産の指定先を孫(長男の妻が亡くなった場合)、のように、委託者である父自身が先々までの当該不動産の引継ぎ先を信託の中で設定することができるのです。
