遺言とは

遺言(いごん)とは、「自分の死後はこうしてほしい」という意思を記したもので、財産の承継・処分方法、後見人の指定などにおいて、法的な効力を持ちます。ご自身の意思を明確に残しておくことで、残されたご親族間の相続トラブルを防ぐ効果が期待できます。今は円満なご家庭であっても、ご家族を束ねているご自身の死後も、ご家族を束ねてくれる遺言を残す意味は大いにあります。

①遺言の効力
民法によれば、遺言は遺言者が亡くなった時点で効力が発生します。(985条)
また遺言は遺言者が亡くなられるまでの間、自由に書き直しや撤回ができます。(1022条)
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。(1023条)

公正証書遺言(後述)を作成した場合でも、自筆証書遺言によって後から撤回することも可能です。ただし、その自筆証書遺言の作成上の不備で撤回の効力が生じないリスクもありますので、撤回の遺言も公正証書遺言で行えば確実です。

②遺言の種類
遺言には、普通方式の遺言(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類)と、特別方式の遺言(死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言など、特殊な状況での遺言)があります。

③普通方式の遺言について
自筆証書遺言:自分で遺言の全文・氏名・日付を自書して押印。ただし法的要件不備のため無効となることもあります。
公正証書遺言:本人と証人2人で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述します。
秘密証書遺言:本人が証書に署名・押印した後、封用に入れ封印して公証役場で証明してもらいます。実際にはあまり利用されていません。

自筆証書遺言は、受遺者(相続人)に負担を掛けることになります。なぜなら、遺言書保管所に遺言を保管する手続きをしなければ、家庭裁判所に「検認の申し立て」をしなければらなず、検認の申し立てをする場合は、執行に時間がかかる(通常1か月程度)からです。
一方、公正証書遺言は、証人が2名必要で、多少の手間暇、費用が掛かりますが、検認が不要なうえ効力が高いため、お勧めです。(ただし遺言の内容を公証人と証人に知られることに抵抗感がある方もいらっしゃいます。)

④遺言を残す目的
遺言は、生前にご自身の意思を表示しておくことを言いますが、遺された方々のために書くものであり、受け止め側(ご遺族)が後で困ったり、嫌な思いをしないよう配慮する必要があります。昨今は雑誌やテレビでも遺言書を勧めていることもあり、何となく書いた方がよさそうなイメージがありますが、遺言書は相続を乗り切るための手段であって、書く必要がなければ書かない方がよい場合もあります。なぜなら、遺言書には法的拘束力があるため、後から問題が残るような遺言書は、覆すのは大変だからです。

当事務所では、まずはお客様の現状をヒアリングさせていただき、ご本人の意思、遺されるご家族の生活資金面、法律上の遺留分などを検討のうえ、遺言書に記載すべき最適な内容をご提案させていただく流れを取ります。

遺言を作成するメリット

遺言を書くメリットは、

 ①遺産分割協議を避けることができる⇒仲が良い家族が遺産分割で争うことを避けたい

 ②想いを残すことができる⇒ご自身の財産をどうしたいのか、自ら意思表示できる

 ③相続手続きがスムーズにできる⇒相続人の負担を大幅に減らすことができる

などがあります。

遺言を残した方がよい方

①独身

②子がいない

③財産を引き継ぐ人がいない

④認知した子か、認知していない子がいる

⑤相続人同士で仲がよくない

⑥財産の多くが不動産

⑦遺産を公共団体などに寄付したい

これらのいずれかに当てはまれば、遺言書を残すことをお勧めします。

「①独身」の場合は、法定相続分としては、「直系尊属である父母」(いなければ祖父母)、それらがいなければ「兄弟姉妹」の順の順となります。しかしもめることもあるため、遺言で分割方法を指定しておくことで争いを回避することを考えた方がよいでしょう。

【参考】法定相続人(配偶者は常に以下と同順位で相続人になれます。) 第1位 子またはその代襲者(子の子、子の孫…), 第2位 直系尊属(父母、いなければ祖父母…), 第3位 兄弟姉妹またはその代襲者(兄弟姉妹の子)

「②子がいない」場合は、「配偶者」のほかに「直系尊属である父母(いなければ祖父母)」も相続人になるため、配偶者にのみ財産を残す場合は遺言が必要です。

「④認知した子か、認知していない子がいる」場合では、認知した子にも法定相続分はありますが、ほかの相続人との間でもめる可能性があることと、認知していない子には相続権がないため、もしその子にも財産を残したい場合にも、遺言が必要となります。

「⑤相続人同士で仲がよくない」、「⑥財産の多くが不動産」についても、やはりもめることを想定し、遺言を残すことが望ましいです。

「⑦遺産を公共団体などに寄付したい」場合は、法定相続とは異なる財産の残し方になるため遺言書が必要です。なお、相続人には遺留分を求める権利はあります。

※各相続人(兄弟姉妹は除く)に対し、法律上取得することが保障されている相続財産の一定割合のこと。

「遺言は縁起が悪い」「遺言を残すのはまだ早い」などの考えもありますが、出来るときにやっておけば、後で後悔することはないでしょう。「遺言を残したら財産が使えなくなる」ということもありません。遺言はあくまで死亡時から効力が発生するもので、遺言の内容と抵触する生前処分の行為は、遺言を撤回したものとみなされるため、作成時にすべて確定するわけではありません。